FM222MkIII

FM222MkIII

フォノEQアンプ

オリジナル「FM222」が登場した1992年、その特異な回路技術による斬新なフィーチャーと高音質は、一本の音溝から信じられないほどの情報量をもったナチュラルで豊かな音を引き出し、世界に衝撃を走らせました。アナログレコードに取って代わる期待のメディアとして登場したCDが“完璧な音楽を永遠に”のキャッチフレーズを掲げる中で、それは、ミュージシャンやプロデューサー、サウンドエンジニア、そして、レコード愛好家に、貴重な、厖大な LPやシェラック盤への福音をもたらすと同時に、アナログレコード再生産の変革へも一筋の光を与える契機ともなったのです。その後、その「FM222」は、新たな機能を搭載した「FM222MkII」となり、その性能を一段と高め、他の追随を許さない存在となりました。そして、今再び、FM ACOUSTICSの絶え間ざる研究開発の成果と新デバイスの登用が、「FM222MkII」の全ての機能・特長を継承しながら、更なる高みへと挑ませる「FM222MkIII」をここに誕生させたのです。

FM ACOUSTICSレゾリューション・シリーズ「FM222MkIII」は、あらゆるMC/MMカートリッジに適応するフォノ・リニアライザー(イコライザー)/プリアンプでありながら、他に類を見ないユニークな可変RIAAイコライジング機能を搭載しています。ターンオーバー周波数と10kHzに於けるアッテネーション量を連続で変えられるこの機能は、1950年代以前の初期のLPやSPシェラック盤など、RIAAエンファシス・カーブが国際的に採用される以前の様々なエンファシスで制作されたディスクに対しても、固定RIAAでは得られなかった最適なディエンファシス設定に完璧に対応。加えて、FM ACOUSTICS社独自のディスクリート構成によるエンハンスド・クラスA増幅回路、偏差±0.05dBを誇る高精度RIAA補償回路は、極めて豊かな情報量と高い音楽性を再現させ、全ての貴重なアナログディスクに新たな生命を吹き込みその真の姿を浮き彫りにします。

■主な特長

  • 類を見ない完全バランス入出力回路構成によって、カートリッジ本来の能力を完璧に引出すフォノ・プリアンプ
  • 偏差±0.05dBの超高忠実度を誇るRIAAカーブ補償回路に加えて、初期のLPやSPなど、RIAAカーブ制定以前のカーブにも連続可変で対応するバリアブルRIAAディエンファシス回路搭載。
  • プラグインモジュールとディップスイッチによって様々なMC/MMカートリッジに最適負荷設定が可能。
  • バランス・疑似バランス・アンバランスなど、どんなラインプリアンプに対しても、自動的に最適にマッチングがとれる完全対称バランス出力回路。
  • 録音されたハムノイズを音質犠牲なく効果的に除去するノッチフィルター装備。ハンドセレクテッド・スーパースピード・セミコンダクターを全面的に投入したディスクリート構成。エンハンスド・クラスAサーキット。
  • 12Vp-pの高ヘッドルーム。
  • ゼロ・オーバーオールフィードバック/フィードフォワード回路構成。
  • バランス回路能力の指針となるCMRR(コモンモード・リジェクション比)110dBという驚異的な性能を誇るバランス入力ステージによって、カートリッジの微小信号を外部ノイズから完璧にプロテクト。

■進化した「FM222MkIII」の新コンストラクション

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■「FM222MkIII」の優れた機能・特長

● カートリッジとの真のバランス・インターフェース

フォノ・カートリッジは、本来全てバランス・ソースとして設計されています。バランス・ソースとは、言うまでもなく、グランドに依存することなくホット/コールドの2本の線だけでオーディオ信号が伝送されることを意味します。ところが今日、カートリッジはしばしば2本の線の内1本がシールドあるいはグランドに落とされた“アンバランス・ソース”として扱われます。そのため、それは、ハムやRFノイズなどを拾いやすくなる原因となってしまいます。それは、カートリッジの信号のように、微小なほどその影響も顕著となります。「FM222MkIII」はこうした問題に対処するため、信号をグランドから切り離しカートリッジとの真のバランス接続を可能とする優れた入力回路をもっています。それは、シールド/グランドに依存した一般的な他の多くのアンバランス接続では決して得られない“広大なダイナミックレンジ”、“高いヘッドルーム”、“音楽信号に干渉して音を汚す外来ノイズの低減”、“ハムノイズの低減”などの多大な改善効果をもたらします。

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● カートリッジ負荷

FM222MkIII_detail_img_14フォノアンプがカートリッジの微小な電力出力をロスや変形させることなく取り込むためには、カートリッジの負荷となるフォノアンプ・フロントエンドの入力インピーダンス/キャパシタンスとの整合が極めて重要です。この抵抗値/容量値の適正な設定は、カートリッジの出力に正しい電気的ダンピングを与え、リンギングやオーバーシュートなどの副作用を抑え、高域特性を改善し癖のないフラットな周波数特性を得ることを可能とします。

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一方、不適切な設定(例えば、数ΩのMCカートリッジに対してMMポジションと同様に47kΩで受けるなど)は、プリアンプに対して見かけ上若干S/Nを有利とすることはできるかもしれませんが、カートリッジに必要なダンピングを与えることはできず、正しい特性を引出すことはできません。

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カートリッジには、それぞれ固有の抵抗、インダクタンスやキャパシタンスがあり、その値は千差万別です。しかも、メーカーからそうしたファクターや適合負荷などへの詳細なデータが開示されないことも多く、あるいは開示されたデータでも正確性を欠くこともあり、また、使用されるフォノケーブルの影響をも加味すると、聴感による補正をも要することもあり、負荷設定を固定して対応することはたいへん困難です。「FM222MkIII」には、そうした様々なケースにフレキシブルに対応し、負荷設定が幅広く行なえる入力インピーダンス/キャパシタンス切替機能を搭載。フロントパネルのシーリングカバー内部に設けられたディップスイッチによって、抵抗と容量をそれぞれ4通りに設定することが可能です。しかも、抵抗はプラグイン・モジュールの差し替えによって、標準以外の4つの値に変更することも可能とし、あらゆるカートリッジに対して最適な負荷設定が行えます。負荷抵抗は一般的に、カートリッジ・インピーダンスの10~30倍を目安(抵抗が小さいほどダンピングが大きくなります)とし、負荷容量は大きいほど高域共振周波数が下がり小さくなります。数Ωのカートリッジでは、先ず負荷抵抗90Ω、負荷容量0.7μFからスタートし、聴感での追い込みで最適な組み合わせを設定することができます。

ノッチ(NOTCH)フィルター

FM222MkIII_detail_img_18レコードには時折、録音時のハムが含まれていることがあります。それは、耳障りなだけでなく、スピーカーへの定常的な負担を強いたり、再生音に混変調歪みを与えたりします。ノッチフィルターはレコードに入ったそうしたハムノイズを位相ずれなく、また、他の周波数への副作用を及ぼすことなく、効果的に減衰させることのできる優れた機能です。ハムノイズの要素は電源周波数50Hz/60Hzの2次高調波にあたる100Hz/120Hzに顕著に現われますが、このノッチフィルターを入れることによって、それらの周波数に的を絞った極めて深く狭い帯域のノイズ成分だけを除去することができます。
ソースの状況に応じて、100Hz/120Hzが選べます。ヨーロッパ録音では100Hz、アメリカ録音では120Hzが的確でしょう。ノッチフィルター機能は往年の名盤からハムだけを取り去り、素晴らしい音を取り戻します。コレクターや音楽愛好家にとって、まさに福音となるフィーチャーです。

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● +10dBゲイン・スイッチ

FM222MkIII_detail_img_21このスイッチにより、ゲインを10dB増強することができます。これにより、0.2mV以下の低出力MCカートリッジにも適応させることが可能です。


 

● 位相反転スイッチ

FM222MkIII_detail_img_23「FM222MkIII」の入出力回路は、ホット/コールドがグランドから切り離された完全バランス設計のため、一般のものと異なり、位相反転のための付加回路を必要とすることなくホット/コールドを入れ替えるだけで位相反転を行うことが可能です。付加回路による位相反転時の音質変化は、本質的に一切ありません。

 

● ノーマル/バーティカル切り換えスイッチ

FM222MkIII_detail_img_25モノーラルのほとんどのSPやLPは、水平方向に刻まれた音溝をもちますが、ごくまれに垂直方向に刻まれた音溝をもつ「バーティカル・カッティング」と称するモノーラルレコードが存在します。垂直情報をピックアップすることのできるステレオ・カートリッジでも、普通にフォノアンプを通すとこうしたレコードは再生できません。「FM222MkIII」にはスペシャル・フィーチャーとしてバーティカル・スイッチを設けられており、バーティカル・カッティング・レコードの垂直情報を完璧に再現することを可能としています。

 

■LFフィルター

FM222MkIII_detail_img_27レコードの反りやトーンアームの共振などに起因するサブソニックは、アンプやスピーカーに大きなパワーを要求し極めて有害なものとなります。このサブソニックを低減するには、一般には、 IECスタンダードによって定められた-6dB/oct.スロープ、-3dB@20Hzの特性をもつフィルターが用いられますが、「FM222MkIII」では、通常のオーディオ信号への影響を最小に止めるために、-12dB/oct.のリニアフェーズ・フィルターを搭載しています。

● ユニークなRIAAディエンファシス可変機能

・音楽ファンにとって、レコードの演奏は一音一音どこをとっても重要なものです。偉大な演奏の中にはLP、あるいは78回転ディスクでしか聞けないものも数多くあります。ところが、今日の機器では、こうしたLPや78回転盤の多くが、何かしら不満を残す再生しかできないのが現状です。その最も大きな理由は、プリアンプがRIAAディエンファシス・カーブでしか再生できないことにあります。

・1950年代以前は、標準化されたプリエンファシス/イコライゼーション・カーブがありませんでした。国際的にRIAAカーブが採用されるまで、様々なレコード会社がそれぞれ独自のプリエンファシス・カーブを用いてカッテイングしていたのです。同じレコード会社でも、録音時のカーブを何度か変更している場合さえあるのです。このため、ディエンファシスが標準RIAAカーブに固定されているという事実に制約された今日のオーディオ・エレクトロニクスでは、本質的に解決できない問題が残ります。初期のLPや78回転盤の場合、今日のRIAA規格では正確に再生することはできないのです。そこで、様々なプリエンファシス・カーブを用意して、古い素材の録音時のカーブに合わせていくことが必要となってきます。

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「FM222MkIII」には、そうした問題を鮮やかに解決するバリアブルRIAAディエンファシス回路を搭載。RIAA以外のカーブで録音されたレコードに対して、“ターンオーバー周波数”と“10kHzアッテネーション”の2つの調整によってディエンファシス・カーブを自在にコントロール。最も適したイコライゼーションによって、的確に再生することを可能としています。

・下の図は、上段が代表的なレコードのプリエンファシス・カーブ、中段にRIAAカーブで再生した場合の誤差、下段に「FM222MkIII」で正しくディエンファシスを設定した場合の結果を示したものです。その下には、その設定に対応する“ターンオーバー周波数”ノブと“10kHzアッテネーション”ノブの位置を示しています。
本機のRIAAカーブ可変機能はまた、古い非RIAAレコードのみならず、RIAAでありながら12kHz以上の帯域に存在する高速な情報を完全にカッティングすることができず、やむなくその帯域のレベルを絞り込んでカッティングされた1968年以前のLPレコードなどにも有効です。通常こうしたLPをRIAAカーブのまま再生すると高域周波数がいくぶんアッテネートされ、高域の空気感が失われてしまうことになります。“バリアブルRIAAディエンファシス”機能は、RIAAカーブを変更し、10kHzにおけるRIAAカーブの減衰特性である13.75dBを+1~+3dBのわずかな量の補正をすることで音質改善の顕著な効果を得ることができます(もちろん、これによってノイズはわずかに増加しますが、通常の高域が減衰をうけ、情報が阻げられるよりずっと有効です)。この機能により、これまで輝きや生気のなかったレコードの音が生き生きとよみがえり、すばらしい音楽体験を実現することができるのです。

・また、これらのケースとは逆に、70年代・80年代後期のある種のレコードにおいては、高域を過剰に強調してカッティングされたものがありますが、10kHzアッテネーションをわずかに深くすることによって、耳ざわりな高域を抑えることができます。

・“暖かさ”のない(あるいは低域のない)録音の場合、ターンオーバー周波数ノブを比較的高い設定とすることによって補正することができます。これは、ターンオーバー周波数以下ならびにそれ以上の周波数全体へリニアに影響するものですが、単に倍音成分がリアルに再現されるのみならず、空間情報や透明感をよみがえらせる効果が顕れます。

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・下の表は、RIAA標準規格を使用していない初期のLPレコードを再生する際の、“ターンオーバー周波数”と“10kHzアッテネーション”の2つのコントローラーの設定に関するガイドラインです。もちろん、これはあくまで理論値であり、ガイドラインであって、録音/マスタリングの過程における誤差によっては最適値がこれと異なる場合もあり、また同一レーベルでも録音によって異なることもあります。ガイドラインを基準として連続可変の2つのコントローラーによる微調整を加えることで、より深い味わいを引出すことが可能となります。

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■「FM222MkIII」用純正アクセサリー

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■オプション

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[ Specifications ]

● ゲイン/入力感度/ヘッドルーム:62dB/0.079mV/12V
● 入力インピーダンス:180/90/45/35Ω(標準添付モジュール/ディップSWで切替え、オプションで他のΩモジュールも可)
● 入力キャパシタンス:0/0.7/1.5/2.2 μF
● 最大出力レベル/出力インピーダンス/推奨負荷:12V/20Ω/600Ω以上
● 入力(Phono, Stereo):バランス(XLR)x2
● 出力(Line, Stereo):バランス(XLR)x1
● 電源:100V AC, 50/60Hz
● 消費電力:10W
● 外形寸法:446W × 44H × 280D mm
● 重量:6.0kg

●オプション: 「FM203II」電源ユニット(※「FM266」「FM268」使用時は不要)
(2007.6 release)

フォノ・リニアライザー/プリアンプ

FM222MkIII

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Boulder
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